春過ぎて ・・・
5月6日は二十四節気の7番目「立夏」。ゴールデンウィークも終盤で、気が付けば春も終わり。
過ぎゆく春を惜しみながら … (畦の花)
軒端苔 人知らずとも 青々と 光あつめて 春ここにあり
古い寺院や神社を歩いていると、お堂や塀の屋根が苔むし、そこに思いがけず植物が芽を出していたりする。雨が降った後などは、苔の柔らかな若緑が光を浴びて殊に美しい。
望月の 夜も静まりて 西行忌
北面の武士でありながら23歳で出家した西行法師。漂泊の歌人として仏道に生き、桜をこよなく愛した西行は「願はくは 花の下にて 春死なむ そのきさらぎの 望月のころ」と詠んだ。そしてその願いどおりに文治6 (1190) 年、桜咲く頃の2月16日に入寂。前日の2月15日は、釈迦入滅の日で涅槃会法要が行われる。西行忌は実際の忌日である2月16日と、仏僧として生きた彼が望んだであろう釈迦入滅の2月15日の二つがある。
因みに今年(2023年) の旧暦2月16日にあたる3月7日は望月。また3月から4月にかけては「閏月」があり、閏2月16日 (4月6日) も望月。前日の4月5日は「晴明」。前々日 (4月4日) の夕方、ふと東の空を眺めると望月に近い月が上っていた。そしてその下方には満開の桜。… 西行は最期の時に桜を見ることはできたのだろうか。
嵯峨釈迦堂 (清凉寺) の涅槃会そしてお松明の夜。
阿弥陀堂前に薄桃色の可憐な八重桜が、ひっそりと咲いていた。まるで釈迦入滅の法要を静かに見守っているように。
閑さや 桜散り敷く 丘の径
音戸山の住宅街にはまるで桜のトンネルのような小径がある。道沿いに桜の植えられている住宅が多く、満開の時期を過ぎると風に桜が舞い散って桜の絨毯のようになる。
雑踏となる「桜の名所」と違って人通りも少なく、静かに春を楽しむことができる。
蒼き空 桜並木に 風光る
東映太秦映画村の正面口前の通り (新丸太町通と三条通を結ぶ道) は、春にはきれいな桃色の桜並木となる。遅咲きの関山だろうか、染井吉野が散り始めると一斉に花開く。4月も中旬頃にはハナミズキが咲き出し、映画村を訪れる人達の目を楽しませている。
久方の 光あふるる 春の日に 色とりどりに 花咲き競う
桜咲く頃になると、住宅街のお庭や生垣も実にさまざまな花で彩られ始める。散歩しながらあちらこちらと眺めているだけで、穏やかな心持ちになれる。
<参考資料> 「六曜・月齢・旧暦カレンダー」 AJNET