’25 桜めぐり “おそ桜”
4月も半ば。はらはらとソメイヨシノが春の風に吹かれて散り急ぐ頃。仁和寺では、京都で最も遅咲きとも言われる “御室桜" が満開の時期を迎える。毎年「御室花まつり」の頃には、大勢の人達で賑わい、嵐電も混み合う。
私はそんな混雑を避け、ご近所で遅咲きの桜見物。
まず向かうのは、仁和寺「御室八十八ヶ所霊場」の結願札所 「大窪寺」。「仁和寺」 の雑沓とは比べようも無いくらいに静か。まずは鐘を撞かせていただいて参拝。鐘の音が静かな境内に鳴り渡るのを聴くと、心が穏やかになる。お堂の東側に立つ石仏 (薬師如来さま?) を見守るように咲く “枝垂桜" が印象的。姿は見せないけれど、あちらこちらで鶯がとても上手に鳴いて… 春を謳歌している。

「大窪寺」 東側には京都府立聾学校があるが、実はこの学校の南側土手には多くの桜が植えられていて、春のお散歩にはぴったり。ソメイヨシノはすっかり葉桜だが、遅咲きの濃紅色の桜 (関山かな?) が待っていてくれた。南側の 「仁和寺」 のざわめきを聞きながらゆっくり桜を楽しみ、次は 「轉法輪寺」 さんへ。
“御室大佛"
で知られる 「轉法輪寺」 のお庭は、いつ訪れてもきれいな花がそこかしこに咲いて楽しませてくれる。桜に花桃に… 長くなりそうなので、「轉法輪寺」編 はまた別の機会に。
「仁和寺」 駐車場の北側に隣接する「五智山 蓮華寺」は、"桜じまい" に必ず訪れたいお寺。真言宗御室派 別格本山の寺院で、不動堂には弘法大師空海が刻んだという迫力ある不動明王が祀られている。本堂南側のお庭には、「五智如来坐像」始め多くの石像が安置されているが、春にはまるでその仏さま達がお花見をしているかのように様々な桜が咲く。中でも私が心待ちにしているのが “御衣黄 (ぎょいこう) 桜"。少し前に参拝した時には、枝が折られたようで蕾も小さくて「今年は開花できるのかな?」と心配をしていたが … きっちり咲いていた!!




“御衣黄桜" は、咲き始めの色が平安時代に公家階級が用いた衣服の萌黄色に似ているためにその名が付けられたという。別名を “ミソギ (御祓)"
とも言い、こちらは寺社にふさわしい呼び名かな。咲き始めは緑色に近いが、やがて花の中心部が紅色になり、花びらにも少しずつピンクの線が入る。開花とともに少しずつ色が変化するとても興味深い桜。
「蓮華寺」 には、“御衣黄桜"
だけでなく “御室桜" や遅咲きの枝垂桜などがあり、またツツジも咲き始めて存分に春を楽しめる。「仁和寺」 から帰る人々は、脇目も振らずに駐車場に急ぐが、お隣のこんなに素敵な庭のあるお寺に寄り道しないとは “モッタイナイ!”。

最後は、嵐電の 「御室仁和寺駅」 から 「宇多野駅」 へ。「花まつり」開催中の土・日・祝日には、特別に係員が配置されるほどの人で賑わう 「御室仁和寺駅」 だが、構内にも “御室桜" が植樹されている。ホームの “御室桜" に目を止める人はほとんどいないが、淡紅色の大輪が、まるで「私を見て!」とでも言うかのように満開。青い空によく似合う。よく見れば、一重咲と八重咲が混在するタイプのようだ。

次の 「宇多野駅」 までの線路脇の道には、四季を通じて様々な草花が咲き、自然の豊かさが感じられる。今回は、山吹の花が土手一面に咲いていて、華やかな春を演出。「宇多野駅」 に近づくにつれて見えてくるのが、濃紅色も鮮やかな桜 “関山" 。勝手に「宇多野三本桜」と名付けて、毎年咲くのを楽しみにしている “おそ桜"。今年も元気に艶やかに満開を迎えている。「御室仁和寺駅」 とは違って利用者も少ないので、ホームのベンチに腰掛けてしばし休憩。「そろそろ桜も見納めかな」と思うと、ちょっぴり淋しい。


