有為泡影 3

総記

 諸佛出於 五濁悪世
  「諸仏は、五濁の悪世に出でたもう。」
      (出典:『妙法蓮華経 巻第一 方便品第二)

 さらに経典では、悪世における衆生について次のように語られる。

 劫濁亂時 衆生垢重 慳貪嫉妬 成就諸不善根故
  「劫 (こう) の濁亂 (じょくらん) の時には、衆生は垢 (く) 重く、慳貪 (けんどん)・嫉妬にして、諸の不善根を成就するが故に …」

 なかなか難解。この部分 『サッダルマ=ブンダリーカ』 サンスクリット語原典からの口語訳を参照すると
 「時代が混乱し堕落した際に、貪欲で善根の少ない人々に、如来たちは巧妙な手段を用いて、唯ひとつの仏の乗物を三種の乗物と解説して説く…」
      (『法華経』上 坂本 幸男・岩本 裕 訳注 岩波文庫 青304-1 p98-99より引用)

 「五濁」とは悪世における五つの穢れ。劫濁・煩悩濁・衆生濁・見濁・命濁のこと。
劫 濁…この世が成立し、破滅に至る前に以下の「四濁」が起こり始める時代の濁り。
煩悩濁…貪・瞋・癡・慢・疑等の感情的煩悩が盛んになること。
衆生濁…人々の心身が衰退し、苦多き社会全体の濁り。
見 濁…極端な意見や邪見等の誤った思想が盛んになること。
命 濁…寿命が次第に減少して短命になること。

  今の世界全体が抱える様々な問題・課題を思う時、まさに「五濁」の真っ只中のような…。

<参考資料>   『法華経』上 坂本 幸男・岩本 裕 訳注 岩波文庫 青304-1