有為泡影 4
「吾唯足知」 われ ただ たることをしる
世界遺産「龍安寺」の茶室前には「知足の蹲踞 (つくばい)」と呼ばれる手水鉢がある。中央の四角の水穴を「口」の字に見立てて「吾唯足知」と読ませる。徳川光圀 (水戸黄門として親しまれる) 寄進とされる有名な蹲踞だが、興味深い意匠だ。
釈尊が入滅に際し弟子たちに示した最後の説法の様子を描いた『仏垂般涅槃略説教誡経』(『仏遺教経』『仏臨般涅槃経』とも, 鳩摩羅什訳) に
不知足者 雖富而貧 知足之人 雖貧而富 不知足者 常為五欲所牽 為知足者之所憐愍 是名知足
とある。
また曹洞宗開祖 道元は、『正法眼蔵』の最後の巻を「八大人覚」として釈尊の最後の説法を自身の遺言として示している。
経済最優先の今の世の中、マスコミもSNSもこぞって欲望を駆り立てている。為政者の中には、止まることを知らぬ欲望の権化のような人物も…。
「知足」… 言うは易し、しかし行うは難し。
