秋の室生寺:金堂特別拝観

奈良,奈良・寺社

 11月初旬、奈良県宇陀市 ”女人高野”「室生寺」の金堂特別拝観参拝。近鉄「室生口大野駅」からバスに15分程揺られて「室生寺前」下車。ほとんどの乗客は「室生寺」参拝者のようだ。

 

室生川と太鼓橋

 バスを降りて室生川沿いに歩けば、目印の朱い 「太鼓橋」 が見えてくる。四方を山に囲まれたまさに山里。「太鼓橋」 の袂には、室生寺に魅せられてその写真を生涯にわたって撮り続けた土門拳氏の常宿 「橋本屋」 がある。

 

 

 

 太鼓橋を渡って受付を済ませると、大きな 仁王門 がその先に。仁王門左の大きなイチョウの樹の黄葉がとても美しい。視線を右手に移すと…?一本の石楠花にピンクの花が咲いて… 返り咲き?室生寺は春の石楠花で知られる寺院。

 

 

金堂

 ゴツゴツとした長い石段「鎧坂」を上り始めると、柿葺寄棟造りの 金堂 (国宝) が次第に全容を表す。石組みの上にどっしりと建つ懸け造りの金堂は、豊かな緑の中で静かに呼吸しているようだ。

釈迦如来立像


 薄暗い金堂に足を踏み入れると、中央に堂々とした体軀の釈迦如来立像 (平安前期・国宝) がいらっしゃる。榧の一木造りで、頭部から胸部にかけては黒くなっているが、通肩に纏う衲衣が朱く、その衣紋は緩やかな流れのようにきれいだ。また舟形光背には、同じ印相の七仏坐像や宝相華・唐草文様が彩色豊かに描かれている。造仏当初はさぞかし華やかで美しかったことだろう。伏し目がちに見えるが、座って拝観すればじっと見つめられているように思えてくる。


 脇仏は文殊菩薩立像薬師如来立像 (平安時代・重文)。釈迦如来三尊としては少し珍しい組み合わせと思えるが、江戸時代中期に他の堂から移された客仏のようだ。像容の違いがよくわかる。

 室生寺は山の中腹にある寺院なので、本堂から五重塔、そしてさらに奥之院へはずっと石段を上ることになる。境内の樹々は少しずつ色づき始めているが、まだ緑深い杉木立の中にひっそりと堂宇が佇むといった趣。


 本堂まで来ると、その杉木立の中に「女人高野」のシンボルとも言える朱塗りの 五重塔 が見えてくる。土門拳が愛した「日本最小の五重塔」はこれだったのか!これまで観てきた五重塔とは異なるしなやかな美しさ、女性的とでも言いたくなる姿は、土門拳が魅せられたのも納得。近くに寄り見上げると、相輪の九輪の上にあるのは水煙でなく独特な形状をした物が付けられている。
 この愛すべき塔は、平成10 (1998) 年の台風被害により倒壊寸前という事態になったが、多くの人々の尽力により無事修復されたという。そんなことを思いながら初めて目にする塔は、なんだか愛おしささえ感じた。

御影堂

 五重塔の左脇道を過ぎると上り坂が一旦下りとなり、その先に 「奥之院」 がある。「奥之院」入り口の先には朱色の橋が架かり、橋を渡るとなんとも急峻な石段が果てしなく続いている。その光景に「行くべきか、引き返すべきか」とためらうが…「今回行かなければ次はないかも」とゴツゴツとした険しい石段を上る!これはまさに “修行" いや “苦行"?


 手摺りを頼りに、所々に設けられた休処で一息いれながら400段近くもあるという石段をなんとか上り切ると、二段屋根宝形造の 「御影堂 (大師堂)」 が迎えてくれた。森閑とした厳かな空気の中、「南無大師遍照金剛」とご真言を唱え深呼吸!!


 「常燈堂」の回廊から眺めた山々の美しい景色は、頑張った人だけに与えられるご褒美かと思えた。懸け造りの柱で切り取った景色は秋色。

 

 


〔参詣道でひと休み〕

よもぎ回転焼き

 太鼓橋から「室生寺前」までの街道は、かつては室生寺参拝者の宿泊所や土産物店が軒を並べて賑わっていたのだろう。そんなことを思いながら、「よもぎ入り回転焼き」の美味しそうな匂いに誘われて入ったのが「栄吉」さん。かつては旅館を営んでおられたようだが、今は「よもぎ入り回転焼き」とラーメンが名物のお店。卵・牛乳を使用していない回転焼き (地方によっては「大判焼き」「今川焼き」とも) の薄い皮からは、よもぎの香りが漂い、手作りの柔らかくて程よい甘さの粒餡ととてもよく合う。また醤油味のラーメンは、素朴な味わいで美味しかった。お店のおかあさん (テレビ等でも紹介されている) も親しみやすい方で、「室生川の見える席が景色が良いからどうぞ」と勧めてくださり、帰り際には喉に良いからと黒飴までいただいた。


 バス待ちの間に立ち寄ったのが、よもぎ餅本舗「もりもと」さん。こちらは土産物店でもあるようで、その店頭で売られているのが「よもぎ餅」。「よもぎ餅」は表面を焼いてあるのが粒餡、焼いてないのがこし餡。お土産に粒餡入りの方と三輪素麺「はしっこ」を購入。帰宅してから早速食べた「よもぎ餅」は、まだ柔らかくて、よもぎたっぷりのお餅は幼い頃に祖母が作ってくれたよもぎのお餅と同じ香りがした。

<参考資料>
 ・室生寺  拝観資料,  website       ・ 「いざいざ奈良」 グルメ website,  JR東海