節分:邪気払いと招福と

京都・寺社

 2月3日「節分」に、須賀神社聖護院門跡を参拝。熊野神社前で市バスを下車し春日北通に向かう。バス停前の熊野神社では紅白の幕が張られ、多くの参拝者で賑わいを見せている。普段は静かな本家西尾八ツ橋や聖護院八ツ橋の店舗前にも出店が並び、道行く参拝者に声をかけて節分らしい雰囲気。

 

《須賀神社》
 須賀神社には、節分の2日間のみ「懸想文 (けそうぶみ)売り」という珍しい行事があると聞いていたので、かねてから一度拝見したいものと思っていた。
 貞観11 (869) 年創建という「須賀神社」は、創祀当時は「西天王社」と呼ばれていた古社。昭和39 (1964) 年には「交通神社」を分祀したので、鳥居の扁額にも「須賀神社」「交通神社」と列記されている。

 

 春日北通に北面して立つ石鳥居の近くには「節分祭」の赤い幟旗がいくつも立ち、行き交う参拝者の中に「懸想文」売りの男性の姿があった。白い布で顔を隠して烏帽子を被り、薄い黄土色の水干を着けた出で立ち。手には文を結び付けた梅の枝と、「須賀神社 縁結びお守」の表書きがある懸想文を持っている。境内西奥の休憩所では、節分の2日間のみ販売されるというその名も「須賀多餅」と「豆茶」で一服する参拝者の姿もあり、和やかな笑顔にあふれている。
 本殿は境内東側にあり、向かって右に須賀神社、左に交通神社の神がそれぞれ祭祀されている。拝所も別々で、順に参拝。

 < “懸想文売り" のことなど>

懸想文売

 まず「懸想文 (けそう, けしょうぶみ)」とは?恋慕う気持ちを綴った手紙、つまり恋文、ラブレターのこと。その「懸想文売り」の始まりは平安時代とも言われ、位が低く暮らし向きが苦しい貴族が、読み書きのできない庶民に代わって恋文の代筆・代読をして小遣い稼ぎをしていたとされる。白い布で顔を隠すのは、正体がわからないようにするためとか。
 江戸時代の京都では一般的になっていたようで、正月初めには市中で「好文木 (こうぶんぼく)」の異名を持つ梅の枝に文箱を掛けて歩く姿が見られたことが、当時人気を博した『曾呂利狂歌咄』に見られる。未婚の女性がこれを買って良縁を占ったようだが、後には畳紙 (たとうし) に米2、3粒を入れたものを渡して、希望に応じて夫婦のこと、商売のことなどの祝言を述べたという。
 須賀神社では、かつて京都にあったこの風習を明治になってから (1947年以降) 節分の恒例行事として復活させたとのこと。その文面は毎年宮司さんご自身が作成されているが、今は若い男女の文面ではなく、前年の干支の動物から、今年の干支の動物に当てた文面となっている。懸想文のご利益については 「鏡台や箪笥の引出しに人に知られないように入れておくと、顔かたちがよくなり着物がふえて良縁がある」 とか。たいそうなご利益です!

 

《聖護院門跡》
 続いては、春日北通を挟んで須賀神社の北側にある「積善院凖提堂」「聖護院門跡」 に向かう。「積善院凖提堂」から「聖護院門跡」の宸殿前庭へは通り抜けができるので、順に参拝。節分とあって団体の参拝者も多く、どちらも賑わっている。

聖護院門跡宸殿

 

 本山修験宗の総本山である聖護院の節分会では、山伏 (修験者) の人々が中心となって行事を執行されているようで、そこここにその姿が見られる。節分会では午後1時から豆まきが行われ、毎年大変な人出と聞く。

 

 

護摩壇

 宸殿南庭には午後3時から修される「採燈大護摩供」のための護摩壇が準備され、宸殿入り口付近では無料の「山伏加持」を受けるための長い行列ができていた。その近くでは、赤・黄・緑の「鬼」が写真撮影に応じ、大いに節分会を盛り上げている。訪れたのは午前中だったので、山門近くでは山伏の方達が甘酒のお接待中。休憩所には、温かい甘酒で一休みする参拝者の和やかな笑顔があふれていた。

<ユニークな節分会>
 修験道の開祖 役行者 (えんのぎょうじゃ) には、前鬼・後鬼という鬼の夫婦が弟子として常に従っている。この鬼夫婦は、役行者に調伏され改心して以来、修験者を助け続けているという。
 こうした所以から、聖護院の節分会・追儺式では、まず僧侶や修験者が鬼に向かって豆をまき真言を唱えて調伏。すると改心した鬼は「福鬼」となり、最後には鬼も加わって「福は内」とだけ唱えて招福を願うという興味深い趣向となっている。

 

 聖護院の南庭には白梅の木があり、節分会を祝うかのようにきれいに咲いていた。その根元にはかわいい猫の置物と共に、修験者姿の狸の親子(?) の置物がさりげなく置かれている。まるで節分会を待っているかのように、宸殿の方を眺めている姿が微笑ましい。これには役行者もスマイル!?

 

<参考資料>
 ・ 『京都・須賀神社 節分に覆面男現る(謎解きクルーズ)』 日本経済新聞2015年1月24日
 ・ 『近世、京の恋愛事情』 東山見聞録 2008 冬号vol.21
 ・ 聖護院門跡 website    ・ 『懸想文売』 ArtWiki, 立命館大学アート・リサーチセンター