自然は楽し!(2) 大窪寺 (仁和寺) は驚きイッパイ

京都・寺社,自然漫歩

 御室仁和寺北側にある御室成就山には、四国八十八ヶ所霊場の写し『御室八十八ヶ所霊場』が設けられている。その第88番 (結願) 札所 「大窪寺」(仁和寺西門を出てすぐ北側) には、あまり人の手が加わっていない自然が残り、お気に入りの場所。

<アセビの新芽、シャクナゲも!>

アセビの新芽と花

 「大窪寺」 堂宇前の「弘法大師像」横には、アセビの木 があり、毎年3月始め頃から壺型の白く小さな花を次々と咲かせ始める。藤のように垂れて咲く可憐な花は、いつも春の訪れを感じさせてくれる。
 遅咲きの桜がまだ見頃の4月半ば過ぎ。そのアセビに、オレンジ色の柔らかな葉がまるで別の花のように育っていた。どうやら新芽らしいが、隣に咲く白い花との色合いがとてもきれい。初めて見る光景に感心!

 

シャクナゲ

 また、境内の北東奥には、山から流れくる水の流れがあり、その山肌の岩の上に小さな不動明王の石像が祀られている。その小川 (?) の近くに、思いがけずシャクナゲの花 がひっそりと …。白い大きな花が木の先に複数咲く様子は、とても華やか。ここのシャクナゲは、咲き始めは淡いピンクらしくそれが次第に白に変わっていくようだ。もともと自生しているのかもしれないが、木立の陰でそっと咲いているのが何とも奥ゆかしい。

<フジが雨のように…>

フジの花

 ゴールデンウィーク中の5月4日 (日) は、仁和寺「八十八ヶ所ウォーク(スタンプラリー)」のイベント開催日だった。いつか成就山の八十八ヶ所を回ってみたいと思っているので、どんな様子かちょっと見学。
 9時半頃、第一番札所「霊山寺」(西門を出て真っ直ぐ西に徒歩3, 4分) 到着。堂宇前はスタンプを押す人達で賑わっている。さすがに普段とは少し様子が違い、グループで参拝の人達が多い。またインバウンドの姿もチラホラ。第八番札所「熊谷寺」まで参拝し、そこからはショートカットで 「大窪寺」 に下山!
 「大窪寺」 に参拝してふと東側の山を見上げると… 若葉の木々に薄紫色のフジの花 が満開。山に自生するフジらしく、毎年5月には山を彩っている。とても高い所から枝垂れているので、気づかない人も多いかもしれないが、紫色の雨が降っているようで藤棚とはまた異なる趣がある。

<弁天池に咲くお宝!? カキツバタ, 河骨>

群生するキショウブ

 境内南側の「弁天池」には、鯉が泳ぎ色々な水草が春から初夏にかけて花を咲かせる。しかし自然災害で決壊したことのある池は、この冬から水を抜いて修築・整備に入っているらしく、しばらく池底が見えていた。「成就山八十八ヶ所霊場」は、令和9年に開山200年を迎えるようで、現在はそのための山の整備が進められていると聞く。
 5月下旬。上賀茂 大田神社のカキツバタが咲いていると知り、「弁天池」の様子が気になって出かけてみた。いつの間にか池には水が張られ、池の南にはキショウブが群生。やっと以前の風景が戻ってきたようだ。そして気になるカキツバタ。池の東端に少しばかりのカキツバタが咲いているのを初めて見た時から、何となく気になり、毎年弁天池に足が向いてしまう。今年もキショウブの勢力に気圧されながらも、懸命に、でもぴんと背筋を伸ばすかのように、紫色の花を咲かせていた。

カキツバタ

 西アジアからヨーロッパ原産のキショウブは、日本ではハナショウブに黄色系の花がなかったため、明治頃から観賞用に栽培され始めたという。ところが繁殖力がとても強いため、日本の在来種を駆逐したりと被害を及ぼす可能性が高いことから、国立環境研究所の「日本の侵略的外来種ワースト100 指定種」になっている。

 

 6月9日、近畿地方が梅雨入りしたと報じられる。久しぶりの青空に、「大窪寺」 まで散歩。遡ること1週間ほど前。「弁天池」で、これまで見たことのない水生植物の花に出会う。葉の形状はスイレンに似ているが、水面からスッと伸びた様はハスのよう。そして水面から少し上に小さな黄色い花が咲いていた。調べてみると、どうやら「コウホネ (河骨)」というスイレン科の植物らしい。そこで、日を改めて花の様子伺い。

コウホネ

 前回より花数が増え、花もよく開花し始めているようだ。外側の花弁に見えるのは、実は萼片で、その萼片に守られるように中心にたくさんの小さな花がある。「河骨」という名と花の愛らしさに少し違和感を感じるが、白い地下茎が乾燥させると骨のように見えるため、「河の骨」と呼ばれていたのが「コウホネ」へと転訛したらしい。根茎を乾燥させたものは、生薬「川骨 (センコツ)」として漢方で用いられている。

 コウホネの近くでは、白いスイレンも咲き始めていた。

スイレン

 現在、カキツバタは「準絶滅危惧種」、コウホネは地域によっては「絶滅危惧種」または「準絶滅危惧種」に指定されている。古来より日本人に愛されてきた植物を見ることができる「弁天池」は貴重。

<参考資料>
  ・  「侵入生物データベース」  国立研究開発法人 国立環境研究所
  ・  「植物データベース」  熊本大学薬学部薬用植物園