北嵯峨の短き秋
11月下旬。今年は猛暑続きで夏が長く、やっと秋がやって来たという感じ。そこで、お弁当を用意して秋を探しに広沢池付近まで散策に出かけることに。
まずは広沢池近くの「佛教大学宗教文化ミュージアム」で、特別展『黒い招き猫:主夜神への願いと想い』を拝見。黒猫がお使いという “主夜神" 信仰について知ることができ、なかなか興味深い展示だった。
次はミュージアムお向かいの「児 (兒 ちご) 神社」に参拝。境内に大きな木の切り株がいくつか置いてあり、社務所前には「阿刀 (あと) 神社」と書かれた木のお札が並べてあった。どうして「阿刀神社」のお守りが「児神社」に??
「阿刀神社」 の御神木の中が空洞化して倒木の恐れがあったため、夏越の大安吉日に伐採し、古くなった祠も新しいものに入れ替えられたとのこと。その伐採された御神木を用いてお札 (お守り) が作られたようだ。弘法大師空海ゆかりの 「阿刀神社」 には、以前参拝したこともあり「これも何かのご縁」と家内安全のお守りをいただくことに。封を開けると、御神木の檜の清々しい香りがあたりに漂った。
後に知ったことだが、「児神社」 の子供祭りの御神輿の御旅所が 「阿刀神社」 になっているらしく、「児神社」 の氏子の方々が 「阿刀神社」 のお世話もされているようだ。
昼食はお決まりの「釣殿ひろば」で!紅葉し始めた楓を眺めながら鳥たちの鳴き声に包まれて頬張るおにぎりは、また格別。池の東側にある平安郷の桜紅葉 (さくらもみじ) が、一足早く秋を演じてくれているようできれい。「釣殿ひろば」にはドングリがいっぱい!子供心に帰ってしばしドングリ拾い… クマは大丈夫??
サワサワと 風吹き渡る 池ほとり 秋の名残りの 団栗拾う (畦の花)
食後は、池西の田畑の畦道や池周辺を漫ろ歩く。稲刈りの終わった田では、刈り取られた稲がまた少し育ち始めているらしく、所々若緑色。役目を終えた案山子は、寂しげに田を守っている。遍照寺山は、赤・黄・緑とステキな秋の色合いに染まって、青い空を行く白い雲によく似合う。一条通の桜並木の紅葉が、照る日に映えて楓に劣らず美しい。




嵐山、特に渡月橋付近は観光客で大混雑。とても秋の風情を味わえる状態ではない。さらに最近では、愛宕念仏寺から嵐山へと歩くインバウンドが増えたので、平日に鳥居本付近を歩いていると「ここはどこの国?」と自問自答してしまうほど。
それに比して、広沢池周辺にはまだ以前の里の風景が残っているのがうれしい。
<参考資料> 「京日記 花がたみ」