檀王法林寺「主夜神法要」
「佛教大学宗教文化ミュージアム」の特別展 『黒い招き猫:主夜神への願いと想い』
を拝見して、「主夜神」という神の存在を知る。12月6日 (土) 午前10時より、檀王法林寺で「主夜神法要」が行われるようだったので訪問。
三条大橋東詰、三条京阪駅からすぐの 「檀王法林寺」(浄土宗) は、年に一度の八大龍王像 (加茂川龍神)の法要 (例年6月第1土曜) や沖縄のエイサーとの関わりでも知られる寺院。
保育園や児童館が併設されている境内には、子供達の賑やかな声。10時を少し過ぎていたので、案内に従い本堂へ。堂内に用意された席はほぼ満席。「主夜神」 が祀られる厨子の扉が開かれ、誦経を耳にしていると厳かな心地になる。1時間ほどの法要だったが、その間も参拝者の人達が次々と入ってきた。
「主夜神」 とは、『華厳経』の終品「入法界品」で善財童子が訪ねた第一の夜の女神 “ヴァーサンティー (婆珊婆演底主夜神)"
のこと。檀王法林寺の縁起によると「慶長8 (1603) 年3月15日夜、開山・袋中上人が念仏をしていると、朱衣に青色の袍を着た主夜神尊が光明の中に現われ、〈われは華厳経に説き給ひし婆珊婆演底主夜神なり。専修念仏の行者を擁護すべし〉と告げ、御符を授けられた」と伝えられている。その後、琉球から帰洛した上人は、主夜神尊を檀王法林寺に祀り、「主夜神法要」を行うようになった。日本では、「主夜」が「守夜」に通じることから、悪夢除け・盗難除け・火災除け・五穀豊穣の神として広く尊崇されてきた。寺伝では、寛文4 (1664)年に霊元天皇が主夜神尊を参拝し、首飾りを供えたとあるように、皇族方からも篤く信仰されたらしい。
また、檀王法林寺では、古くから猫が主夜神の使いであるとされることから、江戸中期より右手を挙げ、霊力が強いとされる黒色の珍しい「右手招き猫」を、「主夜神法要」の折には授与するようになった。この形の招き猫は、模作が禁じられていたともされ、檀王法林寺は「日本最古の伝承をもつ黒招き猫の寺」とも称されている。
ミュージアムの特別展では、貴重な主夜神像が展示されており、じっくり拝見する機会を得られた。
江戸時代に造像された「主夜神」は、合掌をした坐像。鼻筋の通った凛々しいお顔だが、少し開かれた目は優しそうにも見える。中国風の煌びやかな装飾が施された冠を被り、蓮台に座している。蓮台は二層になり、その柱の間では、獅子のように見える動物が神を守護しているのがわかる。また、放射光背には六躰の神像 (?) が付けられており、独特な像容。秘仏として開扉されることが少ないため、美しい彩色がよく残っている。
堂内では宮殿式厨子に安置されているため、像高45cmの尊像の全体像は残念ながら見づらい。厨子の両脇には、青面金剛立像と伝帝釈天立像。こちらもあまり目にしない脇侍で興味深い。
厨子の前には「主夜神尊」の銘を刻んだ古い招き猫が並んでいると聞いていたが、今回は残念ながら拝見することができなかった。しかし、大乗仏教を最も代表する経典であるにもかかわらず、難解とされている『華厳経 (大方広・仏華厳経)』の一端にわずかでも触れることができたのは、大きな収穫だった。
<参考資料>
・檀王法林寺 参拝リーフレット 『主夜神尊略縁起』
・佛教大学宗教文化ミュージアム特別展 『黒い招き猫:主夜神への願いと想い』 チラシ及び出品目録
・ 『黒猫は主夜神のお使い』 関口靜雄 著 (昭和女子大学 歴史文化学科 website 「教員よもやま話」)