雨の「精霊迎え」’25 : 千本釈迦堂

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 8月8日、今年もお釈迦様の御縁日に 「千本釈迦堂 (大報恩寺)」 「精霊迎え」供養に出かけた。
 暑い日中は避けて夕刻の参拝だったので、境内の人影も少ない。参道の灯籠にはすでに灯りが点り、いつもより厳かな気持ちになる。山門近くの塀の上に、ネコがお行儀よく座って … まるでお迎えしてくれているよう。「では、よろしくご案内ください!」

 

大報恩寺 本堂

 本堂横の受付で、まず「水卒塔婆」を書いていただいて、本堂へ。普段は西側の扉からしか入れない国宝の本堂も、六道まいり精霊迎え・送りの期間中 (8日〜16日) は、正面から上がることができる。「水卒塔婆」は、上部に五輪形の刻みがある薄い板の経木塔婆。本堂入り口近くに用意されている「浄水」を「高野槙」につけてから、「水卒塔婆」にも水をつける (水回向、水向供養)。そして御本尊「釈迦如来」の右手に結ばれている紐を引いて「迎え鐘」を撞き、「お精霊 (しょらい)さんが道に迷わず現世に来られますように」と祈る。

 

本堂前の参道

 本堂でお参りをしている間に、突然の雨音。激しい降りだったので、しばらく本堂で雨宿りさせていただくことに。8月8日から16日の期間中は、秘仏の御本尊が御開帳 されるので、人気の無い本堂で静かに釈迦如来と対面。思いがけない心休まるひと時だった。
 通り雨が過ぎ去った後の石の参道は、灯籠の灯りが仄かに映りしっとりとして、なかなか趣きがある。「お精霊さんの涕雨かな?」なんて思いながら釈迦堂を後にした。

 

*水回向、水向供養 仏教では、全ての衆生は生前の業の結果により六種 (六趣とも) の輪廻の世界に赴くという。いわゆる ①地獄道 ②餓鬼道 ③畜生道 ④阿修羅道 (修羅道) ⑤人道 ⑥天道。この中でも畜生道・餓鬼道・地獄道は三悪趣 (三悪道) とされ、ここでは大変な飢渇の苦しみが待っているという。そうした霊に浄水を捧げることで、亡くなった人の滅罪追福を祈り、それがひいては水向供養する者の善根功徳にもつながるということらしい。

<参考資料>
・ 『水向供養とは』 法華宗真門流 総本山 本隆寺  website 「ちょっと豆知識」
・  Web版 新纂浄土宗大辞典