今年の”六地蔵めぐり”は知恵光院で
8月22日・23日は、京都伝統の 「六地蔵めぐり」 の日。しかし今年の猛暑の最中の敢行は辛い。そこで今年は、上京区知恵光院通にあるその名も 「智恵光院」 に参拝。

「知恵光院」 は称念山平等寺と号する浄土宗の寺院。永仁2 (1294) 年に鷹司家の祖・関白 鷹司兼平が一族の菩提寺として、知恩院八世の如空国師を開山として創建。
地蔵堂には、「六地蔵めぐり」 で知られる 小野篁作 と伝わる珍しい 六臂地蔵尊 が安置されている。六臂地蔵尊が祀られているのは、全国でもこちらの寺院だけではないかと言われている。六臂 (六本の腕) が、六道 (地獄, 餓鬼, 畜生, 修羅, 人間, 天) それぞれで苦しむ衆生を救済してくれる功徳があるとされ、小野篁は精進潔斎の後、一刀三礼してこの地蔵尊を彫ったという。「六地蔵めぐり」 が困難な人でも、知恵光院の六臂地蔵尊を礼拝すれば、「六地蔵めぐり」と同じ功徳が得られると伝えられ、毎年熱心な参拝者が訪れると聞く。

普段は非公開の寺院だが、毎年「六地蔵めぐり」の8月23日夕刻に行われる法要時には、一般参拝者も地蔵尊を拝することができる。
8月23日の午後5時頃から法要が始まるようだったので、5時30分頃に知恵光院に到着。「地蔵堂」からは「南無阿弥陀仏」のお誦えが聞こえ、すでに一般参拝者も御焼香の列に並んでいた。
さほど広くはない御堂なので、一人ずつ順番に御焼香をさせていただく。間近に地蔵尊を拝することができるのは、滅多にない機会。丈六の地蔵尊は、蓮華座に立って二本の臂を胸前で合掌。そして右側の二臂に錫杖と柄香炉、左側には宝珠と宝幡(?) を持つ姿。「六地蔵めぐり」の地蔵尊が、どこも白塗りのお顔に鮮やかな彩りの衣の姿なのに比し、こちらの地蔵尊は木地に古い彩色が残り、衣には美しい截金細工が施されている。ふっくらと穏やかなお顔を見ていると、不思議にもじわりとこみあげてくる感動があった。
煌びやかに荘厳された地蔵尊に付き従うかのように、その背後には二十五菩薩像が並ぶ。さらに御本尊の右に四体、左に三体の小ぶりな地蔵尊も安置。「地蔵堂」の名に相応しいラインアップ!

全ての参拝者が御焼香を終えると、ご住職から挨拶。最近は一般参拝者の数も増えているとのことだったが、SNSの影響かな?その後、少しの間自由に地蔵尊を拝観できることができ、熱心に誦経をする人もあった。観光寺院ではないので、参拝の人達も静かにそれぞれの時間を過ごしているのが印象的だった。
午後6時頃には扉も閉められ、境内には静けさが戻った。以前はしばらく扉が開いていたようだが、防犯上のためか現在はしっかりと施錠されている。
帰り道の一条通では、地域の人達が楽しそうに「地蔵盆」の真っ最中。子ども達の賑やかな声が響き渡り、伝統行事の「地蔵盆」が今も続けられているのを目にすると、「子どもは地域の宝」という言葉がここにはまだ生きているんだなってしみじみ感じた。
<参考資料>
・ 『上京区の史蹟百選』 京都市ホームページ ・ WEB版 新纂浄土宗大辞典