長き夏ゆき・・・うろこ雲
”暑さ寒さも彼岸まで” とはよく言ったもので、彼岸に入ってから朝晩はずいぶん過ごしやすくなった。気がつけば、空の雲もモクモクと湧きあがる入道雲からうろこ雲に変わり、セキレイの鳴き声も…。
今年の夏は本当に長く、猛暑、酷暑の日々が続き外出もままならなかったが、今は夏が残した思い出を数えてみよう。
水無月の 夜空を渡る まるき月 紫陽花のごと 色移りゆく
今年は “ゲリラ豪雨” と呼ばれる突然の大雨が多く発生。"線状降水帯" による集中豪雨は日本各地に多くの災害をもたらした。以前のようなしとしとと静かにやわらかに雨の降り続く「梅雨」はどこに行ったのか… それもこれも地球温暖化に原因はあるらしいが、その元凶は人間の行き過ぎた経済活動にあると感じる。
ふたつ三つ またひとつ湧く 入道雲
子どもだったころ。学校からの帰り道、晴れた日には空の雲を見上げては「あれはひつじ、これはソフトクリーム!」などと想像しながら歩くのが好きだった。その癖は今も変わらず、夏の入道雲を見ては一人空想の世界に浸ってしまう。
夕暮れ時、白い雲が沈みゆく夕陽の紅に染まり、西の空が輝く瞬間に出会えた日はなんだかとっても得をした気分!
河骨の 黄色き花さく 池ほとり ただ佇みて 静寂を聴く
空蝉や 緑陰わたる 風に揺れ
御室仁和寺の裏山 成就山の 「御室八十八ヶ所霊場」 の結願札所となっている
「大窪寺」 は、地域住民の散歩やウォーキング、トレーニングの地として親しまれている。山裾にあり豊かな自然に囲まれた静かな場所なので、ついついゆっくりしてしまう。
今年初めて気づいたのだが、放生池 (弁天池) に黄色の小さな花がいくつも咲いていた。キショウブでもないし、葉っぱは睡蓮に似ているけれど? …帰宅して調べてみると 「河骨 コウホネ」 というスイレン科の水草。泥の中にある地下茎が真っ白で骨のように見えるのがその名の由来。根は生薬 (生薬としては「川骨 センコツ」の名で呼ばれる) としても使われる。地域によっては絶滅危惧種に指定されているようだ。
また、夏には蝉時雨が降るように聞こえる。始まりはクマゼミ・アブラゼミの大合唱だが、やがて夏も終わりに近づくと、法師蝉にヒグラシが秋の近いことを知らせて鳴く。久しぶりに蝉の抜け殻「空蝉」を見つけて、なんだか懐かしい。… そう「空蝉」と言えば、『源氏物語』。光源氏を拒んだ聡明な女性。
あるじなき 家にも盛りの さるすべり
盛夏、京都でよく目にする花のひとつがサルスベリ。樹皮がツルツルしていて、木登り上手なサルでも滑ってしまうという例えから名付けられたというが、「百日紅 (ヒャクジツコウ)」 という別名もある。その名のごとく7月から10月初旬まで次々と咲き続ける。鮮やかな紅色の花を咲かせる木が多いが、時折白や薄紫の花も見かける。
中国では、唐代長安の宮廷 (紫薇) で多く植えられていたことから 「紫薇 (シビ)」 と呼ばれているようだ。京都の寺院で多く見かけるのもそのせいかもしれない。
仁和寺 御影堂 の門の傍にもきれいな濃いピンクのサルスベリが咲いていた。弘法大師 空海も、唐で百日紅 (紫薇) を見たのだろうか。よくよく花を見てみると、ひとつひとつの花は小さくヒラヒラと丸まった花弁6枚があり、なかなか可愛い。今はコロンとした丸い実が残りの花に混じっている。
盂蘭盆会 浄土への道 また一歩
子らの声 路地にひびきて 地蔵盆

京都では8月16日の 「五山送り火」 が終わると、22日・23日には 「六地蔵めぐり」 が行われる。そして地蔵菩薩の縁日である24日前後には、地域の 「地蔵盆」 と続く。町内の辻々に大切に祀られている「お地蔵さん」が、キレイにお化粧されて登場。「お地蔵さん」は子どもの守り仏という「地蔵信仰」から、子ども中心の賑やかなお祭りのような行事となっているが、最近では少子高齢化が進んで中止になった町内も多いと聞く。
石ぼとけ 肩よせ坐 (いま) す あだし野や 上弦の月 ひかり清けし

今や奥嵯峨の観光イベントのようになった
「あだし野念仏寺」 の 千灯供養。かつては地蔵盆にあわせて8月23日・24日の両日に行われていたが、コロナ禍後は8月最終土・日の開催に変更となった。
久しぶりに訪れた千灯供養は、心に沁みると言うよりは、秋の祭礼行事のような賑やかさで、率直なところ少々がっかり。夜空の月はどんなふうにこの光景を眺めているのかな?
畦の花