泉谷の春:西寿寺(右京区鳴滝泉谷町)

京都・寺社

花咲くモミジ

 ソメイヨシノが見頃となった4月初旬、冬桜の様子を見に西寿寺まで散歩。散歩には丁度良い気候で清々しい。周山街道から北の方を眺めると、すでに西寿寺の桜が山の中腹を彩っているのがわかる。
 いつもながらアップダウンのある参道は少々きついが、山側の林の中から聞こえてくる鳥の囀りを耳に、傍らの石仏を見ながらの山門までの道のりは嫌いではない。

 山門を入るとまず迎えてくれるのがモミジ。若々しい緑色の葉が茂り、可愛い赤い花がたくさん付いている。この時期の緑は鮮やかで目に染みる。所々に植えられた枝垂桜を見ながら石段を上り切ると、石段横には赤い薮椿と桜が競うように咲いている。ここの桜は一重咲きで白っぽいピンク。”御室有明” かな?


 まずは本堂に参拝し、さらに石段を上って墓地の見晴台へ。背後には大きな石のお薬師様が見守る永代供養・合祀墓がある。眼下には枝垂れ桜とモミジの若葉が仲良く風に揺れている。視線を遠くに移せば、双ヶ丘そして京都タワーもよく見える。家並みを桜が彩り、嵐電の「桜のトンネル」も一望できる。前回訪れた時には枝垂れ梅が咲いていた庭園墓地には、濃い桃色の桃の花がきれいに咲いている。


   山裾の 桜に染まる 街並みを 鶯ともに ほとけ見晴らす  (畦の花)

双ヶ丘と桜
桃の花
三光石神社
参道途中の枝垂桜

 

 

 

 

 

  墓地の西側にある石段を上がっていくと、古い阿弥陀如来の石像を中央に配していくつもの無縫塔が安置されている。西寿寺歴代のご住職のお墓のようだ。少しばかりお邪魔して西の方を眺めると、眼前には桂・長岡丘陵方面の景観が広がる。近くには桜、ミツバツツジが咲いて「暗いお墓」のイメージは微塵もない。東側の三光石神社の側に立つミツバツツジも、紫がかったピンクの花をきれいに咲かせている。藤棚が設けられた墓苑もあり、それを覆うかのように咲く八重の枝垂桜はこれから満開を迎えようとしている。濃淡のグラデーションが美しいピンクの花と濃桃色の蕾の取り合わせが、なんとも春らしい。

桂・長岡丘陵方面
ミツバツツジ
八重枝垂桜

 

 

 

 

 

高台からの眺望を堪能させていただき、最後は “冬桜” のその後 見に東側の駐車場へ。冬のひっそりと咲く姿から、庭園すべてを覆い尽くすかのような咲きっぷりに変わっていた。ひとつひとつの花をよく見ると、冬季より少し大きめで色もほんのりピンク。でもその清楚な風情に変わりはなし!

一面の冬桜
冬桜
八重枝垂桜
参道

 

 

 

 

 

 帰り際、駐車場の入り口近くで丈高い椿が真紅の花をびっしりと咲かせているのを見つけた。日本の固有種で、万葉の時代から「神聖な樹木」として扱われてきた椿だが、赤い椿の花言葉は「控えめな素晴らしさ」「謙虚な美徳」とか。いつも静かに優しく迎えてくれる「泉谷 西寿寺」に相応しい言葉。