『フリーメイソン : 「秘密」を抱えた謎の結社』

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『ダ・ヴィンチ・コード』で一躍有名になったアメリカの作家ダン・ブラウンが2009年に発表した小説『ロスト・シンボル』のテーマとなっているフリーメイソンの「副読本」として荒俣宏が執筆。フリーメイソンや薔薇十字団には以前から関心があり、入門書的でもあったのでとりあえず読んでみた。

荒俣はフリーメイソンの歴史を二つの源流として解説。ひとつはヨーロッパにおける石工の職能組合、特にイギリスのロッジ。そしてもうひとつは17世紀イギリスそしてヨーロッパ大陸での「薔薇十字団」の啓蒙運動。エリザベス1世の信を得て神聖ローマ帝国のルドルフ2世とも面識があったというジョン・ディーからドイツのアンドレーエへと話は展開し、「薔薇十字団」の流れが大陸で独自の展開を見せたと語る。

第3部では、象徴図像学研究で知られるマンリー・ホールの「アメリカはフリーメイソンが開発した」という主張を援用する形で、アメリカでの様々なフリーメイソンの痕跡を熱く語る。この辺りはまさに「荒俣ワールド」。その熱中ぶりが垣間見える。また日本でのフリーメイソンの歴史についても言及されている。

やはり入門書の域は出ないが、巻末の参考文献は役に立ちそう。ところで、果たして人類はフリーメイソンが探求してきた「多」としての情報を「一」にする作業を完成することができるのだろうか?

 

『フリーメイソン : 「秘密」を抱えた謎の結社』荒俣宏著 角川書店 2010.5 (角川oneテーマ21 B-131)