仁和寺「観音会」

京都・寺社

 右京区の世界遺産「仁和寺」では、令和2年度より毎月18日を観音縁日と定めて、観音堂 (重文) で「観音会」が行われている。普段は公開されていない観音堂内を拝見できる機会はそうそう無いことなので、お参りすることにした。

 法要は11時、13時、15時の3回執り行われ、祈願料は500円。今回は11時の会に参拝。開始20分程前に観音堂に着いたが、10人ほどの人達がすでに観音堂前に並んでいた。10時45分、厳かに御堂の扉が開けられ、受付を済ませた人から堂内に入って行く。受付では授与品の季節の花の特別散華が渡される。5月の花は、旧暦の和風月名「皐月」に合わせて「さつき」

 御堂に足を踏み入れると、まず仄暗い内陣の須弥壇中央に立つ御本尊「千手観音菩薩」(像高156.3cm) が目に入る。差し込む朝の光を受けて輝くようで、その存在感は圧倒的。江戸時代の作とされ、42本の腕と頭上に10の小面を持つ。手には日輪や月輪、三鈷杵などを持ち、透かし彫りの光背や宝冠・瓔珞などはたいへんに豪華。
  御本尊の左右の脇侍は「降三世明王」「不動明王」。そしてその三尊を囲むように「千手観音菩薩」の眷属である二十八部衆が、左右に14躯ずつ並ぶ。「梵天」「帝釈天」「毘沙門天」などを始めとし、「迦楼羅王」「阿修羅王」「婆藪仙人」もいる。像容は三十三間堂の国宝二十八部衆像 (鎌倉時代作) に倣っているらしい。最下段に祀られている従者の風神・雷神も、三十三間堂に同じだ。

 いよいよ香が焚かれ、静かな堂内に誦経の声が流れ始める。今では耳にする機会も少ない声明 (仁和寺は「南山進流声明」) を聴いていると、穏やかな心持ちになってくる。少しして焼香が始まり、「千手観音菩薩」を正面から拝することに。内陣内をよく見れば、壁面や柱の至る所に観音菩薩を始めとした絵が描かれている。江戸時代初期に現在の観音堂が再建された時に、絵仏師 木村徳応らによって手がけられたという。壁面には説法をする観音とその三十三応現身、須弥壇正面には「補陀落山」の様子、そして裏側下段には、六道世界が描かれているらしいが、残念ながら外陣から見られるのはその一部のみ。
 20分ほどで観音会は終了。次いで観音法話が行われた。今回は教学部長の法話だったが、弘法大師空海の出家宣言の書とも言われる『三教指帰』の話や、有名な室戸岬の洞窟「御厨人窟 (みくろど) 」に籠もって虚空蔵求聞持法を修した折のエピソードなどが語られ興味深く拝聴した。

 正午を少し過ぎた頃、観音堂を退出。青い空に新緑が映え、庭にはミツバツツジがきれいに咲いている。
 平成の大修理完了を記念しての「観音堂 特別内拝」(2019年) の時には、内陣も公開されたと聞く。また是非ともそんな機会を設けてもらいたいものだ。

<参考資料>
・ 「京都 仁和寺観音堂 : 千手観音像とその仲間たち」九州国立博物館HP (展示案内)
・「仁和寺の観音堂内部を再現!」 東京国立博物館 HP (1089ブログ)
・『聲明について』 SAMGHA ホームページ       ・ 高野山真言宗やすらか庵 ホームページ