清凉寺 : 涅槃会・お松明式 2024

京都・寺社

 昨年は、コロナ禍の影響で4年ぶりに再開された嵯峨釈迦堂 清凉寺「涅槃会およびお松明式」。今年は、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行して以来最初の開催となる。

本堂前の高張提灯

 午後7時過ぎ。清凉寺仁王門前の長辻通は、嵯峨小学校前あたりから徐々に人波が増え、野宮神社・愛宕神社の「御旅所」付近に並ぶ屋台では、家族連れや若者達が列をなしている。
 仁王門前からかなりの人混みで、参道両脇に並ぶ屋台に群がる人々の中を潜り抜けてやっと本堂に到着。今年は本堂で「涅槃会」の法要が行われていたので、読経の声が流れる中、久しぶりにお釈迦さまのお顔を拝す。いつもと変わらない静かな微笑み。内陣西側には江戸時代作の「大涅槃図」が掲げられている。「涅槃会」の日の夕刻からは無料で御本尊を拝観できるからか、観光客らしき人々が本堂内を行ったり来たりして些か居心地が悪い。

護摩壇

 午後8時を少し過ぎて法要が終了。お釈迦さまにご焼香をさせてもらうため内陣に入り、「大涅槃図」もゆっくり拝見させていただく。最近は「涅槃図」に「ネコ」がいるかどうかがよく話題になるが、江戸時代に制作された「涅槃図」の多くには猫が描かれているようだ。清凉寺の「大涅槃図」にも左下隅に猫がさりげなくいる。「涅槃図」に描かれる数多くの動物の中に初めて猫を加えたのは、室町時代の画僧明兆だと伝説的に言われている。真偽のほどは定かではないが、その後の「涅槃図」のお手本となったのは間違いないのでは?

 午後8時半頃、本堂前が一際賑やかになり、ガラス越しに炎が見えた。どうやら護摩壇に点火が行われたようなので、外に出てみる。護摩壇と大松明の周囲を練り歩く「お練り」が続く中、火のついた稲藁が3本の大松明に次々と投げ込まれていく。昨年は松明がすごい勢いで燃え、観客が急いで逃げ出す場面もあったが、今年は残念ながら燃えが悪い。大松明の中程に2度、3度と稲藁が投げ込まれ、やっと燃えたという感じ。今年は雨が降り続いたので、松明の乾燥が十分ではなかったのかもしれない。

 

 

 

 

本堂内

午後9時過ぎ。再び本堂前に向かうと、滅多に開けられない正面の扉が開いていたので、階段下からお釈迦さまを拝し、阿弥陀堂にも参拝。上を見上げれば、竹竿に吊るされた「おみくじ」の赤い高張提灯が夜空に映える。
 お祭りのように賑やかな清凉寺を後に長辻通を南に向かうにつれ、次第に静寂が戻ってくる。夜空には、くっきりと明るい三日月そして星が瞬いていた。

 

 雑踏を あとに残して たどる道 涅槃会の月 西方 (さいほう) にあり (畦の花)