『ルポ 最期をどう迎えるか』

Bibliotheca

2016年、日本の年間死者数は戦後初めて130万人を突破し、20年前に比べると1.5倍に増えた。少子高齢化と同時に「多死社会」になりつつある現在、日本の社会が直面する介護、終末期医療そして看取りといった問題を取材した共同通信の連載(2016年3月〜2017年4月)を加筆・修正し単行本化したもの。
第I部では「自分らしい「死」」をテーマに、在宅医療、延命治療、認知症そして単身高齢者の孤独死を取り上げる。人は「どのように死を迎えたいか」という自分の希望を、どこまで叶えられるのか。家族の死に向き合う時、どれだけ冷静にその希望に対応できるのか。そんな課題を投げかける。
第II部は「多死社会」に向かう日本の社会の取り組みがテーマ。看取りを実践する高齢者施設の実例や、残された家族のグリーフケア活動を紹介。また、終末期医療に取り組む医師のジレンマや政官学の動向についても触れる。特に欧米で生まれたACP(Advance Care Planning)の考え方や実践が、今後の高齢化・多死社会でのキーワードとなるだろうとしている。
人は皆、生まれると同時に「死」に向かって歩き始めている。「生まれ方」を選べないなら、せめて「死に方」だけは自分自身で選びたいと思う。重いテーマを扱っているが、多くの人に読んで欲しい一冊でもある。

『ルポ 最期をどう迎えるか』 共同通信生活報道部 岩波書店 2018.1.25