鳴滝川と鳴滝

京あれこれ

周山街道は福王子交差点から御室川に並行するようにして北上する。この付近から御室川は「鳴滝川」とも呼ばれるらしいが、その名の由来となる滝が福王子バス停から十数分北に行った街道の左側にある。
小さな空き地に川岸に下りる石段があり、その前方に小さな滝が見える。川岸には小さな祠。歴史を繙くと、平安時代には鳴滝川を西河と言い、滝の落ちる所を西滝(現在の鳴滝)と称していたようだ。そして西滝は、霊所七瀬の修祓地のひとつで水の聖地として知られていた。『御堂関白記』や『蜻蛉日記』にその記述が見られる。また祠の近くには、松尾芭蕉の句碑が立つ。風雨に晒されて殆ど読めないが  「うめ白し きのふや鶴を 盗まれし」 と刻まれているようだ。今は川沿いに家が建ち並んでいるが、ここだけは何か霊気のようなものが漂っている感じのする場所。

鳴滝ところで、「鳴滝」という地名にはもう一つ別の伝承があるらしい。
曰く 「昔、雨上がりの後、高水という一人の村人が滝がいつもとは違う大きな音を立てていることに気づいた。寺の住職に尋ねてみるが答えられなかった。神のお告げかもしれないと思った村人は、家族とともに高台に避難。その直後に大洪水が起こり、あたり一帯の家々は壊滅に近い状態となってしまうが、高水家の人々だけは皆無事であった。以後この滝を鳴滝と呼び、この辺りは鳴滝の里と呼ばれるようになった。また高水家は「洪水」と改名し、その名に記憶を残すことにしたという。」

確かに鳴滝の近くには「洪水」と書かれた表札のあるお家が何軒かあった。京の地名の不思議。