『細雪』の椿(嵯峨広沢西裏町)

京あれこれ

広沢池南西の辻角、遍照寺に向かう曲がり角に、真紅の花がたわわに咲く一本の椿の木がある。「右京区・区民の誇りの木」に指定され、谷崎潤一郎の『細雪』にも登場。広沢池と南堤の桜

明くる日の朝は、先ず広沢の池のほとりへ行って、水に枝をさしかけた一本の桜の樹の下に、幸子、悦子、雪子、妙子、と云う順に列んだ姿を、遍照寺山を背景に入れて貞之助がライカに収めた。この桜には一つの思い出がある …(略)… 以来彼女たちは、花時になるときっとこの池のほとりへ来、この桜の樹の下に立って水の面をみつめることを忘れず、且その姿を写真に撮ることを怠らないのであったが、幸子は又、池に沿うた道端の垣根の中に、見事な椿の樹があって毎年真紅の花をつけることを覚えていて、必ずその垣根のもとへも立ち寄るのであった。」(『細雪』 上巻より抜粋)区民の誇りの木・椿

この後彼女達は、大覚寺から清凉寺そして嵐山へと向かう。
桜だけでなく椿の花や色とりどりの春の草花たちを愛でながらの池の畔の散策は、心を豊かにしてくれる。