嵯峨野:青き踏む

京あれこれ

広沢池から平安郷を望む

御室川沿いの桜も見頃となり、嵐山や東山界隈・哲学の道などは、桜見物の人々で大混雑。人混みを避けてのんびり春を味わいたくて、広沢池辺りまで行ってみることに。

スタートは「兒神社(ちごじんじゃ)」から。秋にはコスモスが一面に咲く広場も今は整地され、黄色のレンギョウが咲き誇っている。西には「鳥居形」の曼荼羅山や嵯峨天皇陵の山が望める。広沢池西側の小径には桜や野花が「春の訪れ」を告げ、池では鳥が長閑に泳いでいる。観音島先端にまで行けば、池の東にある「平安郷」の桜がよく見える。

 

今回は北へと道を取り、朝原山の裾に沿って歩いてみる。畑ではキャベツや菜花、さやえんどうなどが育ち、あちこちに農作業に勤しむ人の姿。畦道に立つ桜がきれいに咲き、竹林の方からは鶯の声が聞こえてくる。遠くを見れば、小倉山や嵐山にも桜。とてもゆったりとした気分になる。

 畦道で ふと見上げれば 山笑う   (畦の花)

 

竹林の五輪塔と墓石

「後宇多天皇 蓮華峯寺陵」でちょっと休憩。し〜んと静まって鳥の囀りだけが聞こえ、池の鯉は悠々と泳いでいる。池に架かる橋の前の道を西に進むと「朝原山古墳11号墳」があるようだ。竹林の中に古い4基の五輪塔や墓石が並ぶ。宮内庁管轄地なので、天皇所縁のものなのだろうか?

先の道に戻り再び西に少し行くと、野菜の自販機あり。「岡幸」さんの自販機だ。菜花を買い「今夜は菜花のちらし寿司にしようかな〜」などと思いながら歩いていると、珍しい梅に出会う。そもそもまだ梅が咲いていること自体がちょっとした驚きなのに、なんと一つの枝に紅梅と白梅が咲いている!「源平咲き」と言って梅だけでなく桃などにも見られる現象らしい。しかも梅の隣には満開の桜。梅と桜の花を同時に見られる機会はなかなかないのでは?

梅と桜
ベニトキワマンサク
白い八重桜
枝垂れ桜とピンクの椿
古木の桜

 

 

 

 

道の反対側に目を移すと、枝を大きく伐採されて打ち捨てられたような桜の古木が健気に花を咲かせている。その力強さ、大したもの。横には鮮やかな赤色のベニトキワマンサクが、まるで燃え立つように咲いている。さらによく見れば、雪のように白い八重桜、淡いピンクの枝垂れ桜そしてびっしりと咲き誇るピンクの椿が一列に並んで … まるで春を集めたようだ。どうやら造園業の方の敷地らしいが、嵯峨野は歩く度にいろいろな発見ができて興味が尽きない。

 

 名残惜しいが、今回はこの辺りから南に向かって「兒神社」まで戻ることに。

レンゲに蝶が止まった!
広沢池の辺りの桜

 畦道にはレンゲやタンポポ、オオイヌノフグリなどの野草が色とりどりに咲き出して、蝶々があちらにこちらにと軽やかに舞う。

 

  空高く 山懐に 青を踏む  (畦の花)

 

「源平咲き」の梅

《「源平咲き」とは?》
 「源平咲き」とは一本の木に紅 (赤)・白の花が咲くことで、その呼称は平安末期の「源平合戦」の折に源氏が白い旗、平氏は赤い旗を掲げて戦ったことに由来し、桃や椿でも見られる。
 「源平咲き」が起こる原因について、森林総合研究所の勝木俊雄氏は次のように説明されている。
「組織/器官の形成過程のある時期に一部細胞の色素合成に変化がおき、変化のおきた細胞からその後形成される組織/器官では変化した色素が合成されるため。その仕組みは複雑で、「動く遺伝子」が色素合成遺伝子の近くに飛び込んでその遺伝子の発現を抑制したり (例えば赤色→白色 )、飛び出すことで抑えられていた色素合成遺伝子が活性化したり (白色→赤色) する場合がある。」
 まだまだ解明されていない仕組みもあるようで、自然の不思議 (神秘) を感じる。

<参考資料>
   一般社団法人 日本植物生理学会 「みんなのひろば 植物Q&A」