“半夏生”の咲く庭で (等持院)

京都・寺社

 7月2日は雑節の 「半夏生 (はんげしょう)」 。陰暦七十二候のひとつで「半夏生 はんげしょうず」の頃。この時期京都では、植物の「半夏生」が見頃となる寺院もあり、今年は 「等持院」 を訪れてみた。

  衣笠山の南麓にある臨済宗天龍寺派の「等持院」は、暦応4 (1341) 年に足利尊氏が夢窓国師を開山として創建した寺院。以前参詣した折は、「霊光殿」と茶室「清漣亭」が改修中であったので、今回は改修後の建物の拝観も兼ねてということで。

心字池に群生する半夏生

 庭園は方丈の北側にある池泉回遊式のお庭。「尊氏之墓所」を中心に配するようにして、東側の 「心字池 (しんじいけ) 」 と西側の 「芙蓉池(ふようち) 」 二つの池の周りを歩いて楽しむことができる。
 お目当ての半夏生は、心字池の水際に群生していて今まさに盛りといった感じ。ドクダミ科の半夏生は、10〜15cmほどの穂のような形状の花序に白く小さな花がたくさんついている。その花の下の葉が半分ほど白くなり、それが花のようにも見える。「はんげしょう」という名の由来については、いくつかの説があるらしい。雑節の「半夏生」の頃に花を咲かせるからとか、葉が半分白くなることから「半化粧」と呼ばれるようになったなど。また別名「カタシログサ」とも。

 初めて見た半夏生は、艶のある緑の葉と白い葉、そして時折風に揺れる白い花の穂が涼しげで爽やかだ。お庭には梔子や紫陽花、桔梗の花なども咲き、梅雨の鬱陶しさを少し忘れさせてくれた。

心字池

ところで 七十二候にある植物の 「はんげ」 とは、「烏柄杓 (からすびしゃく)」 という植物の別名。烏柄杓は田畑や道端などに自生し、根絶することが難しいため農家では厄介な雑草とされるらしい。花茎の先の「仏炎苞」と呼ばれる部分が「柄杓」に似ているところからこの名が付いたという。しかし塊茎は「半夏 (はんげ)」という生薬になり、漢方では嘔吐・つわり・食欲不振などの処方に用いられる。球根が栗のような形で、へそのようなくぼみがあることから「へそ栗」とも呼ばれ、また昔、農家の嫁が草取りがてら生薬になる球根を集めて売り、密かに小遣い稼ぎをしたことから「へそくり」の語源になったとも。

 農家にとって 七十二候の 「半夏生」 は、この日までに田植えや畑仕事を終える節目の日で、地方によってはゆっくり骨休めをすることもある。そして「半夏生」に食べる物も、地方独特の風習があるという。

例えば関西地方では 「タコ」 。「稲がタコの足のようにしっかりの根付いて豊かに実るように」との願いを込めてらしい。また香川では、収穫したばかりの麦でうどんを打ち、田植えを手伝ってくれた人々の労をねぎらうという。

芙蓉池に咲く桔梗

因みに香川県製麺事業協同組合は、1980 (昭和55) 年に7月2日を「うどんの日」と 制定している。

等持院の半夏生を見ながら、改めて陰暦の奥深さや面白さに触れたひとときだった。

<参考資料>
・  LOVEGREEN ウェブサイト   「植物図鑑」        ・ 新日本カレンダー(株)   「暦生活」
・  熊本大学薬学部 薬草園 ウェブサイト   「植物データベース」