灯籠流し・送り火 (嵯峨野 2023)

京あれこれ

 台風7号の影響で「五山送り火」前日の15日には暴風雨警報が出ていた京都。16日未明には豪雨があり、送り火や灯籠流しはどうなることかと心配していたが、午後にかけて天候も回復。「五山送り火」は予定通りに点火、広沢池の「灯籠流し」も実施されるとわかり、出かけることに。

 午後7時半頃、広沢池に到着。遍照寺主催の「灯籠流し」は午後7時に開始なので、池にはすでに色とりどりの灯籠が流され、周辺は多くの人々で賑わっている。池の南にある一条通は、車両は東行きのみの一方通行に制限。北西に見える曼荼羅山には、すでに「鳥居形」の親火が点いている。

 今年初めて「灯籠流し供養」をお願いしていたので、流れていく灯籠を見つめながら手を合わせ、亡き人に想いを馳せた。16日は新月で月の光はないが、池の北側の「嵯峨富士 (遍照寺山)」の姿が多くの灯籠の灯りの中でくっきりと見え美しい。池の面に映る雲は、まるで池から湧き出る霧のようにも見えてしばらくじっと見入ってしまった。

 

     寄り添いて 水面流るる 灯籠に 亡き父母 (ちちはは) の 面影偲ぶ  (畦の花)

 池の西畔にある「兒神社(ちごじんじゃ)」には灯籠流しの準備のためのテントが設けられ、社務所からは三人の僧侶の方の読経の声が流れている。そろそろ「鳥居形」の点火も始まる頃になったので、本殿に参拝してから大覚寺近くへ移動。

 広沢池の東・南側は「鳥居形」と「灯籠流し」が同時に見られる、所謂「映える」スポットなので観客が集中する。人混みは苦手、しかも送り火はもっと近くで静かに見たいので、北嵯峨高校の東側の農道まで行ってみた。曼荼羅山の「鳥居形」は、麓の暗い田畑を照らすように朱く炎をあげて燃えている。草むらの虫の音を聴きながら改めて合掌。
   ともる火に 両の手合わせ 祈りしは 帰る御霊の 旅安らかに  (畦の花)

 「六道の辻 (福生寺跡)」まで来て、ふと北西を見上げると「鳥居形」がとてもきれいに見えた。「お精霊さん、迷わず西方浄土に帰って行かれますように!」
 今や観光イベントのように扱われがちな 「五山送り火」 「灯籠流し」 だが、地元の人々にとっては大切な盂蘭盆会の行事。参加させてもらっていることをありがたく思いつつ帰路に就いた。