平野神社「御鎮座記念祭・奉燈祭」(北区平野宮本町)

京都・寺社

 桜の名所として名高い「平野神社」では、毎年9月14日に「御鎮座記念祭」「奉燈祭」が行われる。
 平野神社の歴史は古く、主祭神の「今木皇大神 (いまきすめおおかみ)」は、奈良時代には「田村後宮」に祀られており (『続日本紀』伝)、延暦13 (794) 年に平安遷都に伴って平野の地に遷座されたという。その遷座を記念して行われるのが「御鎮座記念祭」であり、「奉燈祭」は昭和50年代に氏子が提灯を奉納する催しを行ったことが始まりらしい。午前中の「御鎮座記念祭」は内々で行われるようだが、午後6時からの「奉燈祭」では拝殿で伝統芸能が奉納される「奉燈行事」が公開されるので出かけてみた。

東神門

 東鳥居の参道前には「御鎮座記念祭 奉燈祭」の案内板。東神門には桜の神紋の提灯が掲げられ、氏子の世話役の人達が和やかに談笑している。日没少し前の境内はまだ明るく、平成30 (2018) 年の台風による甚大な被害からやっと修復が完了した本殿にまずは参拝。境内ではすでに多くの人々が奉燈祭の開始を待っている。

 辺りが少し暗くなり始めた午後6時過ぎ。神官と氏子代表の人達が本殿に入ると、太鼓の音が鳴り響き神事が始まる。静まった境内には祝詞の声が時折聞こえ、厳かな時が流れる。20分ほどで本殿内での儀式は済み、次は本殿前で神官による「鑽火神事 (きりびのしんじ)」。神官によって火打石で熾された「斎火 (忌火, いみび, いむび)」*  は、氏子の人の持つ大きなロウソクに移され、一般参拝者の献灯が始まった。次々と灯されるロウソクの赤い炎が、闇に包まれた本殿を照らして幻想的だ。

鑽火神事

 

 

 

 

 午後6時40分頃。献灯の列がひと段落したところで、いよいよ奉燈行事開始。
 まず奉納されたのは、袴姿の女性と男性による琴と尺八の演奏。賑やかだった法師ゼミの声も止み、夜空には星が光りなかなかの風情。次は創作新日本舞踊「佳卓流」による日舞。家元はまだ43歳の若手だが、2017年にNPO法人京都みらい21の理事兼芸能部長へ就任し、日本の伝統文化・芸能推進育成活動に取り組んでいる新進気鋭の舞踊家という。平野神社の神々も、家元の舞う「七福神」を楽しんだのでは…。最後は民謡の会の人達による歌と踊り。

 

 

 

 

 午後8時頃、まだまだ続く民謡の声を耳にしながら平野神社を後にする。

桜苑の参道

500とも600とも言われる奉納提灯に照らされた参道は一際明るく、まさに「お祭り」の雰囲気。珍しい「鑽火神事」も拝見でき楽しい夜となった。

 *「斎火 (忌火)」… 潔斎をした神職により火鑚 (ひきり) 等の古来の道具によって新しく熾された神聖な火の事で、この火を使って神前に供える物の煮炊きを行う。

<参考資料>
 ・ 平野神社 ホームページ       ・ 佳卓オフィシャルサイト
 ・ 「神道知識の誘 (いざな) ひ」  東京都神社庁ホームページ