十五夜:嵯峨野にて

京あれこれ

 9月29日は「中秋の名月」。今年は満月の日と「中秋の名月」が重なり、しかも晴天。数日前から夜空で次第に丸くなって輝く月を眺めては「今年はお月見散歩をしよう!」と決めていた。

児神社から見える月

 午後7時少し前、広沢池に到着。すっかり日は落ち、一条通を行き交う車のライトが眩しい。月は東、音戸山の上方に見える。白く光る丸い月!池の西側「児神社(ちごじんじゃ)」辺りにはすでに多くのお月見の人達。観音島からは池に映る月影がよく見える。時折吹く風に水面が揺れると、月影もゆらゆらと揺れて… まるでゆったりとした踊りのようだ。ススキもそれに合わせるかのように静かにそよぐ。

 観音島は絶好の撮影ポイントなので人も多い。もう少しゆったりと十五夜を楽しみたかったので、北の休憩所まで移動。昼間はご近所の人達が和やかに談笑している姿を見かける休憩所も、夜はさすがに誰もいない。樹々の間に見える月の光を眺めていたら、どこからともなく声明が流れてきて … どうやら大覚寺の「観月の夕べ」での催事。微かに聞こえる声明に耳を澄ませて見る望月も、なかなかの風情。池からは鴨やサギの鳴き声も時折聞こえる。

観音島から

もう少し月を眺めていたかったので、田畑の広がる農道の方まで散歩。歩きながら上っていく月を見るのも良し!虫の音を聴きながらふと夜空を見上げれば、いくつも星が瞬いている。心地よい静かなお月見…。

 

 

 松尾芭蕉の有名な句「名月や 池をめぐりて 夜もすがら」は、広沢池で詠まれたと言う人もあるが、実はそうではないようだ。しかし「観月の池」として知られる広沢池もこの句に相応しいと個人的には思う。寛朝僧正が遍照寺を山麓に創建した平安時代に思いを馳せれば、池の観音島の御堂に安置された十一面観世音が満月に照らされて金色に輝く様子が眼に浮かぶようだ。

  月あかり 虫の音供に 池めぐる  (畦の花)

【中秋の名月=満月とは限らない?!】
 「中秋の名月」とは、太陰太陽暦で8月15日の夕方に出る月を指す。また陰暦では、月の満ち欠け周期の約半分にあたる15日が満月とされたことから「十五夜」とも呼ばれる。ただ月の満ち欠け周期や太陽と月の位置関係により「中秋の名月」と満月が重なることは意外に少ないらしく、次に見ることができるのは7年後の2030年とのこと。
 また「中秋」とは秋 (7, 8, 9月) の真ん中の日の8月15日を指し、「仲秋」は陰暦8月全体のこと。普段何気なく使っている言葉も調べてみると興味は尽きない!

    <参考資料>    「暦Wiki」  国立天文台