冬、つれづれ

総記

 茶梅 (サザンカ) の 花咲く寺の 曲がり角 過ぐれば待つは いつもの笑顔
 茶梅 (サザンカ) や モノトーンの寺 華やぎて

 明るい花の色が少なくなった冬に、サザンカだけは生き生きと艶やかに咲き誇る。京都では、寺社のみならず生垣としてサザンカを植栽している家も多く、散歩の時の楽しみのひとつ。紅、淡紅、紅白、桃、ぼかしなど色豊かに、楚々とした一重から大輪の八重と形も様々。庭に散り敷くサザンカの花びらの風情も捨て難い。またサザンカの種子は油を含み、ツバキ油と同様に軟膏の材料に利用されているとのこと。

 柚子かほる ゆうげ囲みて 君わらひ ほほえみ返す 幸ここにあり
 レモンの香 まだ見ぬ海を 思いたり

 鍋料理が恋しくなる季節に柚子は欠かせない。ご近所で栽培されている柚子は、小ぶりで我が家にはちょうど良い。柚子の絞り汁と蜂蜜をお湯でうすめた “ホットゆずエード” も冬の飲み物にぴったり。京都では、柚子のみならず金柑、レモンさらには夏みかんと柑橘類の木が植えられているお宅をよく見かける。

 

 托鉢の 声通り行き 師走かな
 氷面鏡 (ひもかがみ) もみじ留めて 山の寺

 昨年の暮れ、嵐山の法輪寺に参拝した折のこと。本堂前の鎖樋下にある水鉢に氷が張り「氷面鏡 (ひもかがみ)」になっていた。青く晴れた空と山の木々が姿を映して冬らしい景色だった。裏門に通じる参道を歩いていたら、何やら庭の木陰で動く生き物が… なんと猿!どうやら岩田山から遊びに来たような…。

 

 初夢や 釈迦に招かれ 初参り
 しぐれ来て 梅のつぼみも 肩すぼめ

 1月8日、お釈迦さまの御縁日で清凉寺に初参り。時雨勝の冬らしい日だったが、お庭の梅はもうふっくらとした蕾をいくつも付けていた。次に訪れる時には、きれいに咲いて迎えてくれるかな?北の山並みには白くもやがかかり、それはそれでまた趣深い。

 

 

 我に問う 枯草に咲く 水仙花 寒風に立つ 強さありかと
 鴨川の 寒き水辺に 二羽のサギ 寄り添う姿 温かきかな

 1月半ば、比較的空いている時期かなと思い三十三間堂 (蓮華王院) まで出かける。本堂に並ぶ諸仏像全てが国宝指定 (2018年) になってからは初めての参拝となる。本堂含め境内全体が、はるか以前に訪れた時とはずいぶん変わっており、いささか戸惑った。あの時は、拝観中に突然「ノーピクチャー!」と叫ぶ女性係員の声が堂内に響き渡りビックリ!どうやら外国人観光客が写真を撮っていたらしい。その出来事があまりにも印象的で、残念ながら肝心の仏像群の姿はおぼろげにしか記憶に残っていない。今回はリベンジとばかり(?) ゆっくりじっくり拝見。本堂を出て境内を散歩していると、南側「太閤塀」前の枯草の中に水仙が一茎だけ咲いているのが目に止まる。凛としつつも愛らしい姿。


 

帰り道は鴨川沿いを散歩。橋桁近くの浅瀬には鴨を始めサギ、川鵜などの鳥達が羽を休めている。残念ながらユリカモメは見られなかったが、数羽の鳶が空に弧を描きながら悠々と滑空している。なんとも気持ち良さそうに…。

 

 

 大寒の 冷たき雨に 山けぶる
 やはらかに 光そそぎて とりどりの 花色やさし 春待ち人に

 節分も間近の晴れた日。宇治の萬福寺までちょっと遠出。広い境内には観光客も少なく、思わずのんびりと過ごしてしまう。初夏には蓮が咲き競う放生池も、今は養生中で寂れた雰囲気。しかし池の東側の休憩所で、春を待つ花達に出会う。水仙、サザンカそしてロウバイがオブジェのように活けられて、拝観者を優しく迎えてくれているようだ。ロウバイのほのかな甘い香りが、春間近を感じさせてくれる。南側に建つ塔頭「天真院」の庭にも水仙が活けられている。古木の幹や竹、石など廃材や身近にあるものをさりげなく活用して美しく見せているのが心憎い。
 次は蓮の咲く頃に来てみよう!             (畦の花)