清凉寺・涅槃会とお松明式 (右京区嵯峨釈迦堂)

京都・寺社

3月15日、嵯峨野の清凉寺(嵯峨釈迦堂)では、涅槃会・お松明式が行われた。「お松明式」は京の三大火祭りの一つとして、京都市無形民俗文化財にも登録されている行事で、一度見てみたいと思っていた。
午前11時から本堂前の境内では、高さ7mほどもあるという漏斗状の3本の大松明が立てられ始め、本番に向けて準備が着々と進んでいる。午後3時、本堂には高張提灯が設置され始め、境内西側の狂言堂の前には、地元保存会の人達による「嵯峨大念仏狂言」を見ようと観客が集まり始めた。今年の演目は「橋弁慶」「釈迦如来」「土蜘蛛」の三つだったが、時間の関係で残念ながら最初の「橋弁慶」のみ拝見。お寺の境内で初めて見る狂言は、とても興味深く、また楽しいひと時だった。
日もとっぷり暮れた午後7時頃、再び清凉寺に。境内には屋台がいくつも並び、多くの人達で混み合う様は、まるでお祭りのようだ。子供達も多く訪れていて、地域の人達によって支えられてきた伝統行事であることがよくわかる。私も久しぶりにお祭り気分を味わおうと、屋台の味に舌鼓。
午後8時から、住職を始めとする僧侶そして地域の役員の人達による「お練り」という行事が始まり、境内に響く読経の声と観衆のざわめきの中、いよいよ護摩壇に点火。真っ赤な炎がパチパチと音を立てながら、護摩壇を包み込んでいく。そして長い竿にぶら下げられた稲わらが点火されて、3本の大松明に次々と放り込まれていく。3本の大松明は瞬く間に大きな火柱となり、早春の夜空を赤々と照らし続ける。想像していた以上にドラマチックで、信心深くない私も思わず手を合わせたくなるような瞬間だった。

お寺の行事である涅槃会大法要と、地域の人々の農耕祭儀が、長い歴史の中で次第に融合して現在のような独特な行事に結晶していったのか。地域に根付いている嵯峨釈迦堂がますます好きになった一日だった。