嵯峨野阿弥陀寺の六斎念仏

京都・寺社

阿弥陀寺山門

 8月23日地蔵盆の夜、嵯峨野「阿弥陀寺」「嵯峨野六斎念仏」を拝見。嵐電「有栖川」駅で下車し、三条通を西に数分行くと右手に斎宮神社がある。その反対側の細い道を入ると「阿弥陀寺」まではすぐ。
 道の突き当たりには多くの石仏が並べられ、灯りが点された提灯に優しく照らされている。中央の台座に座る「大日如来」を地蔵菩薩が囲んでいるらしい。山門には「浄土宗 阿弥陀寺」とあるが、門前には「阿吽の狛犬」?可愛い獅子のようにも見える。

 開始時刻 (午後8時) より15分ほど早く着いたが、六斎念仏が奉納される本堂に用意された観客席は8割がた埋まっていた。それほど広くはない本堂の入り口近くに観客席が設けられ、奥の方にはすでに鉦や太鼓が準備されて揃いの浴衣を着た保存会の人達が忙しそうに動き回っている。

 いよいよ開始!まず鉦の音とともに静かにお念仏が聞こえ、次第に笛や種類の違う太鼓がそれに合わせて場の雰囲気を高めていく。今年は「一山(いっさん)打ち」と言って念仏曲を発願から結願まで全曲演じての奉納のようで、演目は「発願・四段たぐり・猿廻し・願人坊主・四季・せり上げ・娘道成寺・時雨・八嶋・四ッ太鼓・祇園ばやし・越後獅子・越後さらし・鉄輪・四枚獅子・神楽獅子・結願念仏」
 年末に六波羅蜜寺で行われる「空也踊躍念仏」の仕草に似たような静かな踊りがあるかと思えば、「時雨」では女装をした男の子や丁髷姿の人が面白い身振りで演奏に合わせて踊る。「祇園ばやし」では祇園祭の綾傘鉾の棒振りが採り入れられ、「越後獅子」は越後獅子姿の四人の演者が太鼓を叩きながら所狭しと踊る。

祇園ばやし
越後獅子

 

 

 

 

9時も過ぎ、いよいよエンディングに近くなってきたかなと思っていると、大太鼓の激しい音とともに鉦、笛が鳴り響き緑の「神楽獅子 」(二人立ち) が登場。アクロバティックに倒立をして見せた後、さらにもう一頭の神楽獅子が加わり、2頭で踊り回る。碁盤上での倒立が最大の見せ場だが、今回はなかなか成功しなかった。しかし何度も挑戦する姿に多くの拍手が送られた。これで終わりかな?と思ったところで、土蜘蛛の精が登場。今度は獅子と土蜘蛛の精が激しく立ち回り、ついに土蜘蛛が獅子めがけて糸を投げつける。絡んだ蜘蛛の糸を身体に巻き付けて獅子は這う這うの体で退散。

 

 念仏を唱えての踊りを思い描いていただけに、歌舞伎・能・狂言といった伝統芸能から様々な要素を取り込んで自分達のものを創り上げていった「六斎念仏」という民俗芸能には感服した。「嵯峨野六斎念仏保存会」は現在会員が25名とのことで、着替えや準備のこともあり、「一山打ち」をするのはとても大変なようだ。それでも今年は中学生と小学生の男の子3人が新たに入会したようで、伝統が引き継がれていくことを願いたい。

お土産の「蜘蛛の糸」

 ところで、「神楽獅子」で投げられた「蜘蛛の糸」を持ち帰って神棚に供えると「厄除け」になり、先に付いている糸の芯 (鉛玉) は財布に入れておくと金運に恵まれるという言い伝えがあるとのこと。新入会員の可愛い男の子が分けてくれた「蜘蛛の糸」をお土産に、とても楽しい時間を過ごさせてもらった夜だった。

<参考資料>
 ・  『2023年 六斎念仏踊り 一覧』   京都観光Navi, 京都市観光協会
 ・  嵯峨野六斎念仏保存会  ホームページ
 ・  京都中堂寺六斎会  公式サイト