高山寺 金堂 特別公開 ’23

京都・寺社

表参道

 平成30 (2018) 年の台風豪雨災害で境内全域が大きな被害を受け、金堂も半壊した 栂尾 (とがのお) の「高山 (こうさん) 寺」。2020年に第一次復旧が完了し、今年 (2023年) 秋に金堂と本尊釈迦如来坐像が初めて一般公開された (11月11日~20日)。

 高山寺には何度か訪れているが、金堂内部を拝観するのは初めて。紅葉の時期は三尾 (高雄 (尾)・槇尾・栂尾) には多くの人々が訪れ、市営駐車場も観光バスや他府県ナンバーの乗用車が多く見かけられた。

金堂

 表参道入り口から急な石段を上り切った先にある 「金堂」 は、寛永11 (1634) 年に仁和寺の子院真光院から古御堂を移築したものと伝わり、当初の堂宇は室町時代に焼失している。
 桁行三間、梁行三間、一重入母屋造、銅板葺で、正面に一間の向拝が付き蔀戸が設けられている。堂内は内陣と外陣の構成。外陣天井は格天井、内陣天井は小組格天井。

 

本尊(金堂外より)
本尊(金堂外より)

 内陣仏間の中央にある須弥壇に 本尊 「釈迦如来坐像」 が安置されている。施無畏印と与願印を結んだ身体はふくよかな感じで、穏やかな表情の尊像。ゆったりとした衣文の様子は平安時代の仏像に似ているが、制作年代は不詳。お顔の左頬にかけて白いシミのようなものがあるが、豪雨時の漏水によるものなのだろうか。釈迦如来の涙のようにも見える。

開山堂

 仏間右陣には 「宝冠釈迦如来坐像」 「聖観音菩薩坐像」 が安置されている。
「宝冠釈迦如来坐像」 は、南北朝から室町時代にかけて院派仏師により制作されたという。髻を結った頭に宝冠を被る姿は菩薩のようにも思われる。截金を用いた紋様や彩色がよく残るきれいな釈迦像だ。「聖観音菩薩坐像」 の方は、江戸時代のもので寄木造に漆箔が施されている。左手に未敷蓮華 (みふれんげ) を持ち、右手は拈華微笑 (ねんげみしょう) の形はまさに聖観音。
 仏間左陣には 「千体地蔵」。夥しい数の小さな地蔵尊が、雛壇に安置されている。制作年等は不詳。

 釈尊を思慕し天竺に渡ることを熱望した 明恵上人 は、この御堂で何を思い考えていたのだろうか。紅葉が始まった境内は賑やかで、明恵上人が求めた森閑とした静謐さは感じられない。

   清滝の 瀬々のいはなみ 高雄山 人もあらしの 声ぞさびしき   明恵上人

<参考資料>
・ 世界遺産 栂尾山 高山寺 公式ホームページ
・ 『京都非公開文化財特別公開拝観の手引』 第59回 京都古文化保存協会, 2023
・ 『明恵上人集』 久保田淳, 山口明穂校注 岩波書店, 2009 改版  (岩波文庫 青326-1)